50年ほど前まで大陸を支配していた帝国が崩壊してから後、大陸には多くの小国家が興った。 諸国の勢力争いのため、大陸は麻のごとく乱れ、世は群雄割拠の時代へと突入する。 人心は乱れ、そして、疲弊していた。 繰り返される戦いと、その勝敗によって、日々変化する価値観。 宗教も法律も貨幣制度も度量衡も、すべてが、その日戦いの勝者となった国のものになり、その国もまた、明日には敗者となる。 昨日まで英雄であった者が、今日は反逆者として処刑されるのも、さして珍しいことではない。 確かなものが何もない――そんな乱世の中で民衆が心安らかに暮らせるわけもなく、打ち続く戦乱に飽いた民衆は、平和と安寧を望んでいた。 穏やかな日々を、世界に安寧をもたらしてくれる強大な力の持ち主を、民は切望していたのである。 |