「ま、こんなところだろう。想像力貧困な日本の警察は、まさか泥棒が被害者の家で暮らしているなどとは思うまい。これで、おまえは自由だ」

「氷河……」
氷河は笑いながら気楽に言うが、これはどう考えても、犯罪幇助である。
瞬は、不安な目をして、能天気に笑い続ける氷河を見やった。

氷河は、しかし、堂々と昼の光の中で愛でることを許されるようになった恋人を前に、いたって上機嫌である。
「おまえは、おまえが自由になったことを喜んでいればいい。これで、おまえは自由だ。祖父も父も、もう誰もおまえを縛らない」

実際のところ、それは、氷河が泥棒を閉じ込めておくために作った拘置所だった。

「誰もおまえを縛らない……俺の他には」

氷河の言葉で、瞬はその事実を知った。
そして、そうと知りながら自ら進んで、その檻の中に入っていったのである。



瞬は、結局、氷河の用意してくれた安全な檻の中に残り、氷河の許で絵を描き始めた。
氷河もたまに絵筆を持つが、それは専ら、瞬の身体にイタズラするために使われているようである。





Fin.




■注■ クラリス姫:『ルパン三世・カリオストロの城』において、ルパンに心を盗まれてしまった可憐なお姫様の名です



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