恋する悪魔






自分が悪魔だということに、僕が気付いたのはいつだったろう。
何年も前のことのような気もするし、ほんの数日前のことだったような気もする。

悪魔と言っても、僕には、先のとがった長く細い尻尾がついているわけじゃないし、コウモリみたいな羽があるわけでもない。
姿は普通の人間で、『女の子みたいだ』なんて言う人もいるくらいだから、おそらく、僕は、柔弱な外見を持っているんだろう。

でも、外見がどうあれ、僕が悪魔だってことに違いはない。

僕は、呪文を知ってる。
人の心を操る呪文。
獣に姿を変えることもできる。

普段は、自分が悪魔だってことがばれないように、僕は善良な人間の振りをしている。
でも、陽が暮れて、世界を闇が包み始めると、僕は人間の振りをしていることができなくなるんだ。

僕は、夜の空を飛びたくなる。
獲物に出会うと、喰らいつきたくなる。
人間を堕落させ、僕の仲間にしたくなる。


人間がひしめきあって暮らしているこの世界で、悪魔は孤独だから。
ひとりぽっちだから。





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