梅雨の季節にぽっかりと出現した、ある晴れた日のこと。 久し振りの青空に浮かれて庭に出た瞬は、花壇の横で、怪しく蠢く奇妙なものを見付けた。 否、それは、その存在自体は奇妙でも何でもなく、その場にあるということが奇妙なもの、だったのである。 瞬が庭で見付けた奇妙なものとは、直系15、6センチほどのホールケーキだった。 ちなみに、チョコレートケーキである。 「3号、大丈夫―っっ !? 」 「3号、死なないでーっっ !! 」 「あーん、助けてーっ! 重いよぉーっっ !! 」 ホールケーキの周囲では、何やら小さな悲鳴のようなものが盛大に飛び交っている。 瞬がその場にしゃがみこんで、その不審なケーキをよくよく観察してみると、そのケーキの周囲では、ケーキよりも奇妙奇天烈なもの――少なくとも、瞬はそういうものを見るのは生まれて初めてだった――が右往左往していた。 その奇妙奇天烈なものとは、すなわち、瞬の人差し指ほどの大きさの小人たち、である。14、5人はいるだろうか。 彼等はお揃いの可愛らしい上着を着ていて、個体の区別がつかないほどそっくりな顔をしていた。 どうやら、ホールケーキを皿ごとどこかに運ぼうとしていた際に、仲間の一人がケーキ皿の下敷きになってしまったらしい。 10数人の小人たちの幾人かは、ケーキの載っている皿の下を覗き込み、他の幾人かは、その皿を仲間の上から移動させるべく、小さな手で必死に皿を押しのけようとしていた。 |