同じ顔をした二人が親密そうに語らっている様を、少し離れたところから眺めている二人の男がいた。 「一時はどうなることかと思ったが、あの二人には嫁小姑のトラブルは起きそうにないな」 「貴様と俺は永遠にそりが合いそうにないが」 「それは仕方あるまい。いくら瞬の兄でも、貴様と馴れ合う気にはならん」 「お互いさまだ」 晴れた夏の空の下で、一方では二つの花が笑い合い、もう一方では殺伐とした会話が交わされている。 花が一輪、その殺伐とした区画に、ふわりと舞いおりてきた。 「兄さん、あの……ごめんなさい。あんなことして」 「おまえに似合わないといわれてしまったからな」 「それは、あの……」 最愛の弟に向けられた一輝の言葉がいつのなく皮肉げなのは、おそらく、側にやってきた瞬の肩に、至極当然の権利とでも言うかのように置かれた、氷河の手のせいだったかもしれない。 兄のその言葉に、瞬が少し肩をすくませる。 「あの、兄さんには、和装の方が似合うかな……って」 「弁解はいい」 不機嫌そうにそう言ってから、一輝はすぐに真顔になった。 「昔からずっと、おまえの幸せだけを願ってきた。おまえがいいなら、それでいい。この毛唐がどうなろうと構わないが、おまえだけは幸せでいろ」 「兄さん、そんなこと言ったらエスメラルダさんに悪いよ。これからは──」 「ブラコンでもいいと言ってくれる相手を選んだ」 沙織に白い花のブーケを手渡しているエスメラルダを横目に見てから、一輝はそう告げた。 「おまえだって、馬鹿で鈍感で間抜けでもいいと思って、この阿呆とくっついているんだろう。この阿呆は、タキシードなんぞ着れなくてもいいと思って、おまえを選んだんだろうし」 まるで脅迫するような目をして、一輝が氷河を睨みつける。 自分の婚礼の日だというのに、一輝の目は、むしろ花嫁の父のそれだった。 「人間がそう思うのは、妥協でも諦めでもない。それはわかってるな?」 「はい」 「なら、いい」 今は素直に瞬が頷くのに、一輝は満足げに顎をしゃくった。 それから、少し声のトーンを落として、彼は、ぼやくように言葉を続けた。 「本当は――少し嬉しかったんだがな。おまえが駄々をこねてくれるのが」 「兄さ……」 薄く苦笑した兄に瞬が何か言おうとした時、チャペルのウェディング・ベルが、祝いの庭に祝福の音を響かせる。 その音に弾かれたように、白いワンピースを着た花嫁が、頬を幸福の色に輝かせて、彼女の選んだブラコン男の胸に飛び込んできた。 Happy Marriage
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