キオス島の浜辺には、夏の風が吹いていました。 ヒョウガがその島を訪れたのは、最近、その島に獰猛な大獅子が現れて暴れ、多くの島民が犠牲になっているという話を聞いたからでした。 もっとも、ヒョウガは、親切心からその大獅子を退治しようと考えたわけではありません。 ある日突然、北の国で暮らしていたヒョウガの許に、知恵と戦いの女神・アテナが現れて、その獅子を倒せる人間はヒョウガだけだと言い、そして、そうすることをヒョウガに命じたのです。 アテナはオリュンポス12神の中でも特に有力な女神でしたし、しかも人間に好意的なことで知られている神でした。 その仕事の報酬として彼女が約束してくれた、戦いでの勝利と栄誉にも惹かれて、ヒョウガはその島にやってきたのです。 けれど、ヒョウガは、故国を遠く離れたその島で、戦いの勝利や栄誉などよりもずっと価値があり、それらのものよりも大きく彼の運命を変えるものに出会うことになったのでした。 |