Divine Intervention II






仕事が滞っていることは、大した問題じゃなかった。

モデルの女優は、その事実をすら自分の価値を高めるための宣伝に利用したし、マスコミも勝手な推測を繰り出しては、毎日楽しそうに踊っている。

問題は、糊口をしのぐための仕事の方じゃなく、3ヶ月後にシドニーで開催される国際ビエンナーレの出品作の方だった。
それは、若手アーティスト中心の国際ビエンナーレで、出品を依頼されたのは日本では俺とD.I.の二人だけ。
こんなことになる前は、D.I.へのライバル心もあって――それは今もあるが、今はそれはいい意味でのライバル心になっている――俺は相当張り切っていた。

なにより、国際ビエンナーレは、自分の描きたいものを描くことができ、おそらく、日本国内でのそれよりは正当な評価を得られるだろうことが期待できるイベントだったから。

だが、それすらも、今の俺にはどうでもいいことになってしまった。

瞬に会いたい。
俺は、どうしてももう一度瞬に会いたかった。






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