塔の下で神官たちが焚いている乳香の甘い香りが一層強く、立ち昇ってくる。
神の配偶者が交代した最初の夜には、神の訪れを祈願し、夜を徹して香を焚くのだと言っていた。


神の意思によって選ばれた神の配偶者の許に、誰も訪れない――はずの――最初の夜が、静かに忍び寄り始めていた。






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