そして。 ある日、俺は、ついに見付けたんだ。 それは、瞬が決して足を向けない島の西の端にあった。 瞬が、無意識に父親のことを忘れようとしていることを思えば、俺は最初からこちらの方を探すべきだったのだろう。 ――樹木が取り除かれた ハウスの横には、人の手で栽培されていたとおぼしき麦畑があり、大麦や小麦が収穫されないまま、ぼうぼうと雑草のようにひしめきあっていた。 建物自体が、そのまま一つの部屋になっていて、中には、組み立て式の寝台とテーブル、チェストと椅子を兼ねた木箱があり、小さな机の上には古い型のランプがひとつ載っていた。 そこにあるはずの無線機はなく、他に目につくものは、プラスチックのケースに収められた数冊の本と植物の標本だけだった。 そして――テーブルの脇に、白骨化した男性の遺体があった。 病か、あるいは事故で、おそらくは12年前のある日、彼はここで倒れたんだ。 突然倒れたまま動かなくなった父を、まだ幼かった瞬はどう思ったのだろう。 しばらくは、父の遺体と一緒に、この家で過ごしていたのだろうか。 湿度はさほど高くないとはいえ、1年を通じて日本の初夏と大差ない気温のこの島で、やがて、それは腐敗し、異臭を放ち始める。 瞬には、その変化が受け入れられなかったのだろう。 化け物のように変貌したそれを父だと認められず、もしくは恐れて、この家を出た――に違いない。 父親に関する瞬の記憶の混乱は、そのせいだったのだろう。 幼かった瞬が、どんな気持ちでこの家を出たのか、俺には想像することもできなかった。 |