「氷河!」

瞬と瞬の父親が暮らしていた家を出て数分もいかないところで、瞬が俺を待っていた。
島のこちら側に来ることを怖れていた瞬がここまでやって来るには、相当の勇気が要ったことだろう。

瞬の父が日記に書いていたように、瞬の父が望んでいたように、そして、瞬の父がそうだったように、瞬は強くなれる人間なのに違いない。

俺の姿を認めると、瞬は安堵の表情を浮かべて、俺に抱きついてきた。
「ひとりは嫌。ふたりがいい」
「……瞬」

俺の親父の犯した罪と後悔と、瞬の父親の弱さと強さと、俺自身が犯した過ちを悔いる気持ちと、そして希望。
そんなものと一緒に、俺は、瞬を力いっぱい抱きしめた。






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