「不肖の弟子が、いつも世話になっている」 “不肖の弟子”は、にこやかに笑って、彼の仲間たちにそう言った。 突然、氷河に訳のわからない挨拶をされた彼の仲間たちは、揃って眉をひそめたのである。 「どーしたの、氷河。氷河に弟子なんかいないじゃない」 「氷河が不肖の弟子なんだろ」 「おまえが弟子などとったら、弟子が苦労するばかりだ」 瞬たちが口々に告げる言葉を聞いて、不肖の弟子が情けなさそうに顎をしゃくる。 そして、不肖の弟子は、 「やはり、そういう認識が一般的なのだな……」 と、考え深げに呟いた。 「???」× 3 普段の氷河の言動がまっとうマトモだとは誰も思ってはいなかったが、今日の氷河は平生にも増して奇妙である。 氷河の言葉を訝っていた瞬の表情が、むしろ不安げなものに変わり始めた時だった。 突然、 「瞬、助けてくれっ! 俺の中にカミュがいるっ!」 という悲鳴にも似た氷河の声が室内に響いたのは。 「え?」 瞬が氷河の悲鳴の意味を問い質そうとする前に、“氷河”が分別顔で言う。 「地上では相変わらず闘いが続いているというし、色々と心配だったのだ。なにしろ、氷河は不肖の弟子なのでな」 「カミュ、俺の中から出ていけ〜〜っっ !! 」 「てっとり早く現世に来るには、何と言っても、この手がいちばんだ」 ころころと表情と口調を変えて──声は同じである──取り乱して喚きながら、冷静に状況説明をする“氷河”に、瞬たちは、ひたすらあっけにとられるばかりだった。 |