オリンポスの神々が、瞬の住むエリシオンを訪ねることはしばしばあったが、瞬がオリンポスに足を踏み入れるのは、これが2年ぶりのことだった。 瞬が最後にここを訪れたのは、人間に教えた青銅の冶金術を意図したこととは違うことに使われて、オリンポスの神々に助言を求めに来た時。 パンテオン──万神殿──が、ひどく壮麗で巨大だったことを記憶していたが、それは今も変わっていなかった。 オリンポスに住む神々は、人間たちに比べれば往々にして美しく、だが柔弱だった。 栄養学に考慮した食物を摂り、美しい衣服をまとい、額に汗して労働することもなく、徒歩でほんの数分の移動にさえ機械を使っていれば、そういう生き物ができあがるのだろう。 美しい神々が花のように集うオリンポスには、しかし、活気や生気というものが欠けていた。 その活気のなさは、初めての訪問の時から数年、最後の訪問から2年を経た現在、更に増しているように感じられる。 灰色の石でできた巨大な建造物が、瞬の目には、以前にも増して空虚な容器に見えた。 |