外の世界で、瞬は、違う氷河に会うことがある。

(僕のものじゃない氷河)

瞬のものでない氷河は、瞬の望むとおりの氷河ではいてくれない。

「ああ、今日は雨か」
憂鬱そうに氷河が言う、そんな一言が、瞬を傷付ける。
瞬は、温かく静かに降る春の雨が好きだった。

(僕の好きなものを、氷河は嫌いなんだね……)
それだけのことで、瞬は、涙を零さずにいられなくなるほどに傷付くことができるのだ。

だから、瞬は、自分の氷河の許に駆け戻る。
言葉を発することもなく、瞬に触れてくれることもなく、その瞼を開けようともしない、瞬だけの氷河の許に。






【next】