瞬は今でも時々、夜中にふと目を覚まし、氷河の寝顔を見詰めることがある。

生きている氷河の横顔には、こめかみの脇に小さな傷があった。
それは、彼が彼の闘いを闘っている時に負った怪我の名残りかもしれない。
あるいは、子供の頃の悪戯が過ぎてつけてしまった傷かもしれなかった。

瞬だけのものだった氷河には、そんなものはなかった。
瞬だけの氷河は、きずひとつない滑らかな陶器のように、完璧で端正な横顔を持っていた。

だが、今の瞬は、夢の中の氷河より、そんな傷痕きずあとの残る、生きて温かい氷河の方を美しいと思うのだった。






Fin.






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