俺は、父とは関わりのないところで幸せになろうとして、並み以上の努力をし、人に羨まれるほどの成功を収めたと思う。
だが、俺は少しも自分を幸せだとは思うことができず、そんな自分に焦ってばかりいた。

どうすれば、俺は幸せになれるのか。
俺はそれだけをずっと考え続けてきたんだ。
──父への復讐のために。

だが、俺には、俺自身の幸福が何なのかが、どうしてもわからなかった。


これからはあまり気負わずに、こだわりを捨てて考えてみよう──と、瞬を抱きしめる腕に力を込めながら、俺は思った。
そうすれば、こんな俺でも、父には父の苦悩があったのだと思えるほどに幸福な人間になることもできるかもしれない。


瞬の身体には、甘い花の匂いが染みついている。
俺は、花の中で、答えを見つけたような気がした。






Fin.






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