「馬鹿だな」

氷河が自分の思うところを口にすると、どちらかと言えば、瞬をいじめるよりは庇うことの方が多い紫龍は、まず一言、そう言った。
「瞬が本当に可愛いだけの弱い奴だったら、誰も庇ったりしない」

脇から、瞬を庇うよりはからかうことの方が多い星矢が、口を挟んでくる。
「いじめたりもしねーよな。ただの弱い者いじめじゃ、いじめる方の格が下がるもん。瞬はさぁ、なんつーか、あの健気なとこがいいんだよな。ついつい いじめたくなる」
「泣く前に、泣くまいとして、一瞬 眉を寄せるところがたまらない」
「おっ、紫龍、わかってるじゃん! そうそう、そうなんだよなー」

同年代の仲間たちに、どこのエロジジイの発言かと思うような会話を聞かされた氷河が、目いっぱい顔を歪める。
「結局それだ。瞬はいつも、可愛さとか弱さを盾にして、みんなの気を引いているんだ」

氷河のその言葉を聞いた星矢が、一瞬、呆けたような顔になる。
それから、星矢は、自分より年長の氷河に、小馬鹿にしたような目を向けてきた。
「氷河って、案外お子様なんだな」

氷河は無論、ムッとしたのだが、星矢の目に、自分のどこが“お子様”に映ったのかが、彼にはわからなかった。
なので、反駁の言葉も出てこない。
氷河は、訳のわからないことを言う仲間の前で、むすっと唇を引き結んだ。






【next】