「沙織さん、こんなのありかよ? アテナ的には、そんな“人生”でもOKなわけ?」
「ありあり。もちろん、大ありよ」
半分以上がからかいと安堵でできている星矢のクレームを、沙織は、嬉々として聞き流した。

「氷河には、グラードの地質学研究所にポストを用意するわ。瞬、福祉関係の資格を取るのなら、臨床心理士の資格を取りなさい。氷河と同じ研究所内のカウンセリングルームに配属してあげる。あ、それから、二人のために家を買ってあげるわね。白いポーチのある、うんと可愛い庭付き一戸建て! 大きな窓と小さなドアと、部屋には古い暖炉があるのよ〜♪」

それぞれの人生を自分で選べと言っていたはずの沙織は、わかる人にしかわからない古い歌を熱唱しながら、勝手に話を進めていく。

「愛する人のために、障害に立ち向かい、非難に耐え、そしてそれらのものを乗り越えて、愛を成就させようとするなんて、なんて素晴らしいことなのかしら! さすがは私の聖闘士、私は、あなたたちのアテナであることを誇りに思うわ〜っ !! 」
沙織は、自分の聖闘士たちが選んだ道に能天気に感激し、今にも踊り出しそうだった。

「…………」
それがスポンサーの意向なら、星矢たちには、もはやクレームをつける余地はない。

そして、それが瞬が決めた瞬自身の人生だというのなら、誰にも口出しはできなかった。
瞬は、瞬自身の子供の頃の夢を叶えようとしているのだから。






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