「ほんとに、すぐ泣くんだから」 「もー、やってらんねー」 「こんなことで泣くなよ! おまえ、一応男なんだろ!」 そういうことを言われると、泣くまいと思うほどに涙があふれてくる。 どうしてなのかは、瞬自身にもわからなかった。 「泣いても、何の解決にもならないんだぞ」 瞬は、兄にいつもそう言われていた。 だから、泣き虫を治すために、それなりの努力もしているつもりだった。 だが、瞬の涙は止まらない。 悲しくても、辛くても、痛くても、嬉しいことがあった時にさえ、それはすぐに瞬の瞳にあふれてくる。 氷河に初めて会った時もそうだった。 氷河は、他の子供たちに数ヶ月遅れて、城戸邸に連れてこられた。 それまで間近で見たことのない金色の髪。その上、瞳は海の色のように青いらしいと聞いて、瞬は、なぜか胸をときめかせて、新しい仲間の見物に向かう星矢たちの後を追いかけた。 城戸邸のエントランスホールにいた氷河は──自分が動物園の白クマよろしく、見物の対象にされていることを、あまり愉快には思っていなかったのだろう。 瞬が聞いていた通りに青い瞳で、彼は、自分の周囲に鈴なりになった同年代の子供たちを、不機嫌そうに睥睨していた。 その途端、である。 その青い瞳に出会った途端に、瞬は声をあげて泣き出してしまったのだった。 その場でいちばん驚いたのは、おそらく、瞬たちを睨みつけていた氷河その人だったろう。 瞬の泣き癖を知らない上に、氷河は自分の目の持つ力にも無自覚だった。 氷河は、その青い瞳を見開いた。 そして、突然大声で泣き出した瞬を、それこそ、動物園のパンダでも見るような目で、まじまじと見詰めた。 最悪の初対面だった。 |