初夜






「瞬、どうしたんだ」
「ん……ううん。何でもない」
「何でもないなんてことがあるか」
「でも、ほんとに何でもないんだ」
「コトの最中さいちゅうに泣かれるのならともかく、終わった途端に泣き出されたら、俺とこうなったことを、おまえは後悔しているのかと不安になるだろうが」
「そんなことないよ。僕は、今、すごく幸せだよ」
「なら、なぜ泣く」

「ちょっと……昔見た光景を思い出したから」
「昔、見た?」
「1500年以上昔のメキシコでね」
「映画か何かの話か?」
「小説だったかも」
「話せ」

「氷河にはつまんない話かもしれないよ」
「構わん」
「氷河、眠くないの?」
「このまま朝まで、おまえが俺の横でずっと泣いているんじゃないかと思うと眠れない」
「……眠くなったら、言って。すぐやめるから」
「ああ」






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