「こらーっっ !! もう、昼メシの時間も過ぎたぞーっ !! おまえら、いい加減にしろーっっ !! 」
二階にある氷河の部屋の窓の下から、星矢の怒声が響いてくる。

どうやら先刻から氷河たちに幾度も呼び出しをかけていた電話は、星矢からのものだったらしい。
電話で呼び出すことを諦めて庭にまわった星矢は、今度は拡声器持参だった。

「ああ……っ!」
意識を、星矢と氷河の二つの方向に裂かれて、瞬が身悶える。
「あンの馬鹿野郎が……!」
瞬の中に更に深く身を進めながら、氷河は低く呻いた。

「氷河……やだ! やだ、やめないで……!」
瞬が、そんな氷河に懇願するように訴える。
「わかってる。ちゃんとしてやるから」
氷河とて、そんな不粋な声の一つや二つで、この素晴らしい運動を中断する気にはなれなかった。

氷河の確約に安心して、瞬は彼に小さく頷いた──つもりだった。
氷河に激しく揺さぶられていたので、それが氷河に通じたのかどうかは、瞬自身にもわからなかったのだが。


ともあれ、その日、一晩──正確には、14時間16分──を費やして、氷河と瞬はそれ・・がとても良いものだということを十二分に理解したのである。
それ・・は、失敗を恐れる気持ちを振り払い、勇気を奮い起こして挑むだけの価値がある素晴らしい冒険だった。






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