「俺は、おまえを寂しくさせたりはしない」
瞬の肩に手を置き、氷河は、呟くように、だが固い決意を込めて、そう言った。

「氷河?」
瞬が、怪訝そうな上目使いで、突然そんなことを言い出した氷河の顔を覗き込んでくる。
そんなことになったら、地上と人類が滅びてしまいそうだから──とは、氷河はもちろん口にはしなかった。

「さて、星矢たちに芋を持っていってやるか」
「焚き火、平気? 僕、焚き火を済ませたあとに、お芋だけ持ってきてあげるよ?」
「おまえが俺を守ってくれるのなら大丈夫だろう」
「うん!」

──子供のように屈託のない瞬の笑顔。
それを守るのが、氷河の役目だった。
氷河自身と地上の平和のために。
何よりも、瞬のために。


夏の暑さに耐え抜いたあとに巡り来る安堵の季節は、冬の寒さを堪えるための覚悟を養う季節でもある。
秋に二つの顔があるように、恋にも二つの面があるのだろう。
瞬にはいつも、その幸福な姿だけを見詰めていてほしいと、すっかり高く遠くなってしまった薄青色の空を仰ぎ見ながら、氷河は思ったのである。






Fin.






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