再会の約束をして昔馴染みと別れ、氷河と瞬は家路に着いた。
時刻は、まもなく明日になろうとしている。

「明日から、また仕事か」
氷河の不満は、仕事にあるのではなく、実は、明日もまた7時には起きなければならないことに向けられている。
それはわかっていたのだが、瞬はとりあえず、氷河をたしなめた。
「人様のお役に立てる、やりがいのある仕事なんだから、文句言わないの」
「はいはい」

ドーム越しに、夜空には星が見える。
この星は、半世紀前にも そこにあった星、何千年何万年にも そこにあって瞬いていた星なのだろう。
氷河と瞬には、星のさざめきが、空の囁きのように見え、聞こえた。

『氷河の側にいて。僕の代わりにずっと』
『瞬の側にいてくれ。俺の代わりに永遠に』

以前、いつか、誰かにそんなことを懇願されたことがあるような気がする。
だが、氷河も瞬も、それが誰の言葉だったのかを、もはや思い出すことはできなかった。
誰かに命じられたのだとしても、あるいは命じられたのではなかったとしても、彼等は彼等の大切な人の側を離れることはできなかったから。
その言葉を告げた人の意思は、今では彼等自身のものになっていた。

「綺麗な星」
「人間の暮らしがどれほど変わっても、こればかりは変わらないな」

「僕の心みたいに」
「俺の心と同じだ」
氷河と瞬は、ほとんど同時にそう言って、重なる二つの言葉と心とに微笑した。






Fin.






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