ところで、オロシヤ国の次期国王は、現国王の王子であり、瞬王子より年上でもある氷河王子ということに(一応)なっていました。
ですが、瞬王子の父君が早世していなかったら、当然次の王位は瞬王子のものになっていたわけですから、瞬王子を次期国王にと推す人たちも王宮や国内にはたくさんいたのです。

そういう時にできるものは何だと思いますか。
え? わかりません?
それは、『派閥』。
派閥というものです。
オロシヤ国には、氷河王子擁立派と瞬王子擁立派という二つの派閥があったのです。

その上。
瞬王子は争いごとが嫌いで大人しく、大層優しい王子様でした。
お顔も女の子のように可愛らしい──いいえ、へたな女の子以上に優しい面立ちをしていました。
となると、飛躍するのが大得意なオロシヤ国の国民たちは当然、瞬王子もほもだと決めてしまいます。
そう決めつけることに大した根拠はないんです。
女の子より綺麗だから。それで十分。

ちなみに、瞬王子の場合は、その容姿性格のせいで、受け派が大勢を占めていました。
もちろん、攻め派の国民もいますよ。
女の子みたいに可愛い王子様が、外見そのままに受けだなんてつまらない、と考える尖鋭的な一団です。






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