大事な二度目。 その大事な二度目に、俺はもう半月近く至れないでいる。 半月前、俺はめでたく瞬と だが、どういうわけか二度目が──二度目ができないでいるんだ。 確かに、色んな面でタイミングは悪かった。 俺と瞬が初めて一緒に寝た翌日、またまたアテナに対抗する一団が現れて、俺と瞬はその闘いに駆り出された。 闘いってやつは、その結果として必ずしも平和をもたらすものではないが、勝敗というものだけは必ず生む。 俺たちは生き残り、俺たちの敵として現れた奴等は、今はこの世に存在しない。 瞬はおそらく、またあれこれと高尚なことで悩んでいるんだろう。 人間は戦わずに平和を手に入れることはできないのかとか、言葉による交渉で敵を説得しきれず、結局人を傷付けてしまった自分の未熟とか、そんなことを。 それが、答えのある命題なのかどうか、人間がその答えに辿り着くことは可能なのかどうかを、俺は知らない。 だが、瞬は悩み続ける。 それが悪いと言っているんじゃない。 むしろ、そういうことを悩み続けることのできる瞬を、俺は好ましいとさえ思う。 人間は努力する限り、悩み続けるものだ──と言ったのは、どこの誰だったか。 瞬は、地上の平和と安寧のために、日々努力しているんだ。 俺には真似できない。 実に立派なことだ。 ただ、俺は、その努力をほんの少し、もっと個人的な──要するに、俺たち二人のことにも向けてほしいと思うだけなんだ。 もしかしたら、俺と瞬の間に、へたに強い信頼感があるのがいけないのかもしれない。 俺たちは命を懸けた闘いを共にしてきた仲間なのだという意識。 多分、俺たちのその信頼が失せることはない。 そういう確信が、瞬に、××なんかしなくても二人の間の絆は切れることはないという安心感を抱かせ、その結果として、俺と瞬は二度目のそれに至れずにいるのかもしれない。 しかしだ。 人間ってものは、そんな形而上学的要素だけでできているものじゃないだろう。 人間と動物を分ける視点はいくらでもあるが、人間は結局のところ、食い、飲み、眠ることを繰り返しながら生きることを続ける動物だろう。 淡白と執拗の個体差はあるにしても、肉体面での動物的欲望は瞬にだってあるはずなんだ。 なのに、瞬は、一向に俺の誘いに乗ってこない。 俺は、一刻も早く瞬と二度目のそれをやらかして、それを二人の習慣にしてしまいたいのに。 無論、俺は、幾度もさりげなく瞬に誘いをかけてみた。 瞬の前で露骨に息を荒げてみせるのは逆効果だということはわかっていたから、たとえば、さりげない視線や何気ない仕草、婉曲的な言葉──そういうものを駆使して、俺は瞬を誘い続けたんだ。 だが、その努力にも関わらず、俺は瞬からの 避けられているわけじゃないんだ。 戦闘中も日常生活の場面でも、瞬は、俺が瞬の側にいることを自然に受け入れてくれている。 食事の時も、ラウンジでくつろいでいる時も、何気なく瞬の横にいく俺を、瞬は突き放したりはしない。 誘えば、外出にも付き合ってくれる。 ただ瞬は、夜には必ず、さっさと一人で自分の部屋に引きこもってしまうんだ。 一度はすべてを許し合った恋人と、四六時中一緒にいるのに、二度目ができない。 この苦痛、この不自然! 俺は欲求不満に陥っていた。 |