氷河は、結局復讐に成功したのかもしれない。
兄さんは、僕と氷河のことを知ると烈火のごとく怒り、喚き、そして嘆いた。
でも、結局、憎しみは愛情に負けるものらしい。──氷河も兄さんも。

氷河は念願の復讐を果たしたっていうのに少しも嬉しそうじゃなかった。
というより、氷河は、兄さんのことも兄さんへの復讐もどうでもよくなっちゃったみたい。
氷河はほんとに一時にひとつのことしか見ていられないらしくて──氷河は今は僕のことしか見ていない。
兄さんの派手な激昂にも、あからさまな敵意にも、まるで気付かないのは、ほとんど才能だと思う。

暖簾に腕押しの氷河に怒りを向け続けることの無意味を悟った兄さんは、僕が氷河を好きだって言ったら、しぶしぶではあったけど、最後にはその事実を認めてくれた(のかな?)。


『愛は憎しみに勝る』
──それは、平和を望む全ての人々が、信じ続けることを努力している綺麗な夢だ。
その夢を、ここまで明白に鮮やかに目の前で実現されると、何ていうか……それは、とても感動的だった。
100年分の闘い続ける力、生きる希望が湧いてくるほどに。

沙織さんは、アテナとして、僕たちを連れギリシャに向かうことにしたらしい。
これから僕たちにどんな運命が待っているのかは想像もできないけど、僕はどんなことになっても挫けずに頑張っていこうと思う。

愛は憎しみに勝るんだから、僕はきっと頑張れるよ。






Fin.






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