「アルベリッヒのあんなに楽しそうな顔は初めて見ました」 自分の神闘士を心配して秘密裏に来日していたヒルダは、星矢たちと共に実に生き生きと悪巧みに興じているアルベリッヒの姿を垣間見て、心を安んじたようだった。 「さすがはアテナのお膝元。ここは、誰もが希望を取り戻す場所なのですね!」 ヒルダの感激は大いなる勘違いだったが、沙織は無論、彼女の感動と感激に水を差すような真似はしない。 彼女はただ昂然と、いかにも地上の平和と安寧を司る女神らしい微笑を浮かべるのみだった。 雄弁は銀、沈黙は金。 余計なことは口にせず、悠然と自信に満ちた態度を保っていれば、それで他人は勝手に感動してくれることを、彼女はよく知っていた。 実際、それで、アスガルドの神オーディーンの地上代行者ヒルダは、聖域の女神アテナへの尊敬を更に深めることになったのである。 二人の少女の神々しいやりとりをよそに、誰もが希望を取り戻す聖なる地では、彼女等の 果たして氷河は瞬に綺麗な夢を見させ続けることができるのか、氷河と瞬の昼夜を問わない傍迷惑な愛の交歓は改善されるのか。 輝かしい夢と希望を取り戻したデルタ星メグレスのアルベリッヒの野望の結末を知るものは、今のところ、地上にも天上にも一人として存在しない。 夢の結末は、誰も知らなくていいのである。 Fin.
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