瞬を泣かせることにも、瞬に泣かれることにも、氷河は慣れていた。
瞬の涙腺は、悲しみにも喜びにも性的高揚にも弱いらしく、瞬はこれまでも身体を交えるたびに涙の粒を零して、氷河を楽しませてくれていた。

だから、氷河には瞬の涙のおおよその区別がつく。
昨夜の瞬のそれは快楽を極めた果てに流された涙ではなかった。

氷河は、だが、その涙の訳を瞬に尋ねることができなかったのである。
尋ねる機会を、他ならぬ瞬の涙によって奪われてしまったせいで。






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