目覚めたら、僕は、なんだかすごく心配そうな色をした青い瞳の中にいた。
その横には星矢と紫龍と兄さんまでがいて、ベッドの上にいる僕を見詰めていた。
僕が仲間たちの許に戻ってきたことに気付いた青い瞳が、ゆっくりと、穏やかな春の海みたいに凪いだ色に変わっていく。

僕は、僕を引き止めてくれなかった氷河に拗ねてたけど、氷河は僕のために自分を抑えてくれていたんだと、その温かい色の瞳の中で僕は気付いた。
氷河は僕がここに戻ってくることを信じてくれていて、そして、僕のために僕を送り出してくれたんだ。

「ばーか。だから言ったろ。最後にはここに戻ってくることになるんだって」
「星矢……」
星矢が僕をからかうみたいに、でも嬉しそうな目をして僕に言う。
もしかしたら、星矢も一度、一人で自分を探す旅に出たことがあったのかもしれない。
そして、今の僕と同じようにここに帰ってきたのかもしれない――と、僕は思った。

「戻ってきてくれなかったら、どうしようかと思っていたぞ」
紫龍――。
おそらく紫龍も、僕と同じ旅をしてきたんだね。

氷河は――氷河はどうだったんだろう?
氷河はもっと幼い頃にその旅に出たのかもしれない。
あるいは、彼はそんな旅に出る必要もないくらい、ここ・・で孤独や不信や迷いや仲間の功罪を思い知っていたのかもしれない。
どっちにしても、僕がここに戻ってきたことを氷河が喜んでくれてることが、僕にはわかった。
僕はそれが嬉しかった。

氷河の目に僕が映っていないなんて、僕はなぜそんなふうに思ったりしていたんだろう?
僕はこんなに氷河の瞳の中にいるのに。
仲間たちの目の中に、僕はこんなにちゃんと存在しているのに。

僕はきっと、僕こそが僕自身をしか見ていなかったせいで、そのことに気付かずにいたんだ。
きっとそうだったんだと、懐かしいみんなの瞳の中で、僕は思った。






【next】