「どうだ、気持ち良かっただろう? 俺みたいないい男に毎晩して・・もらえるなんて、おまえは世界一の果報者だ。俺ほどの男がおまえに惚れ込んで一生懸命務めてやってるんだから、光栄に思え」

その日以降、氷河は、コトの後で瞬を褒めるのをやめた。
「自慢じゃないが、俺くらいおまえを好きな男はこの世にはいないぞ。俺くらい おまえを気持ちよくしてやれる男も、俺くらい おまえと相性のいい男もいない」

最初の1日2日は、瞬を褒める時とは勝手が違い、微妙に口調が滑らかになりきれていなかったのだが、『我ながら馬鹿げている』と思いつつ、自分自身を大絶賛しているうちに、氷河はその大絶賛が事実であるような気になってきてしまったのである。
なにしろ、その大絶賛を聞くたびに、瞬が、
「うん」
と、嬉しそうに微笑み頷き、大絶賛男にしがみついてきてくれるのだから、氷河はこの馬鹿げた大絶賛をやめる気になれなかった。


はじめに、(褒め)言葉ありき。
その言葉に追いつくべく自分を磨いていけばいいのだと開き直ることができる程度には、氷河は前向きな男だった。

瞬がそう・・と信じてくれているのだ。
あとは貫き、叶えるだけだった。






Fin.






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