「わっかんねーなー。氷河と瞬なんて、聖闘士な上に男同士じゃん。それだけでも十分異常なのに、奇天烈な踊りを踊ったり、悪い神様ぶりっこして世界征服を企んだりしたことまである あの二人が、今更“普通”だの“平均”だのを求めてどーすんだよ」
自分たちの知らないところで進展していたドラマのあらすじと結末だけを知らされた星矢が、あきれたようにぼやく。

「まあ、自分を偽り、取り繕い、実際よりもよく見せようとするところは、普通の人間並みなのかもしれないな」
紫龍の見解は、おそらく氷河と瞬が演じたドラマのテーマのくだらなさをフォローするものでも何でもなかった。
「……俺、“普通”の意味がわかんなくなりそうだぜ」

そんな仲間たちのぼやきと溜め息をよそに、氷河と瞬は今日も二人連れ立って、元気にグラードマンション十二番館建設現場に向かうのである。
地上の平和を守るため――などというご大層なお題目はなくても、『敵』と名のつくもののいない職場で、文字通り建設的な仕事をこなす彼等の毎日は有意義この上ないものだった。


すべての日本国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
また、生命、自由及び幸福追求に対する権利については、公共の福祉に反しない限り、最大に尊重される。

日本国民の権利と義務を記した日本国憲法第27条 及び 第13条の遂行・実践に邁進する二人は、今、心身共に満ち足りて幸福だった。






Fin.






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