施設の子供たちの生活が3年前の状態に復し、シュンの心が安んじて半月も経った頃。
シュンの許に、国王からの招聘状が届けられた。
「ど……どうして国王様が?」
迎えの者が行く日時のみが記され 用件が全く記載されていない書類を見て、シュンは不安にとらわれたのである。

「今回の措置を見ても、陛下は慈悲深く公明正大な方で、決して悪いことではないと思うのだが……」
院長がシュンの不安と戸惑いを静めるように言う。
そして彼は、ふと思いついたように言葉を継いだ。
「陛下は、おまえの書いたものを いたく気に入られたということだったから、もしかしたら秘書か何かとして おまえを王宮に迎え入れようとお考えなのかもしれない。おまえにはここで私の手伝いをしてもらいたかったのだが――もし私の推察が当たっていたなら、迷わずお受けするんだぞ。おまえのような境遇の者が王宮で働けることはこの上ない栄誉だし、貧しく虐げられた者たちの暮らしを知らない王の側におまえがいることは、この国のためになるかもしれない」

「院長様……」
「おまえはこんなところに埋もれさせておくには惜しい才の持ち主だし、私がおまえに教えたことが国王陛下に認められたのなら、私も鼻が高い」
子供たちのことは心配せずに――と笑って告げる院長の勧めに従って、シュンは書類に招聘状に記されていた日に、王宮へとあがったのだった。






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