星の子学園の職員室の窓に、絵梨衣と美穂の影があった。
軽く合図を送り合い、彼女等に見送られて、氷河と瞬は星の子学園の門を出た。
海沿いの遊歩道に、秋の夕日が二つの長い影を作る。
海鳥はねぐらに帰ったあとらしく、辺りに響いているのは規則正しい波の音だけだった。

しばらく無言で、二人は夕日の中を歩いていた。
やがて氷河が思い切ったように、瞬に提案してくる。
「あー……。手をつないでみないか」
瞬が隣りにいる氷河を見上げると、そこには妙に照れたような彼の顔があった。
肩を抱いたり、膝枕を求めたり、果てにはキスすらも平気でしてのけた氷河の。

あの時氷河は、彼の企んだ計画の遂行という目的に夢中で、実は“山を見ていない”状態だったのだということを、瞬は知った。
氷河らしいと言えば、これほど氷河らしいこともない。
本当に、氷河らしかった。

「うん……」
小さく――そして素直に――頷いて、瞬は氷河に手を差し出した。
秋の一日はすっかり短くなっている。
夕日の中で、ふたりの手はやっとつながれた。






Fin.






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