「どうやら、君はアンドロメダよりも罪深い聖闘士のようだな」 「俺は罪など犯したことはない。俺は正義の味方だからな」 氷河は偉そうに壮語したが、静寂の法廷の裁判官は、そんな氷河を鼻で笑ってみせた。 「罪を犯したことがない? この法廷に来た者は誰もがそう言う。だが、この法廷に来た以上、無実の者などおらんのだ。この私がたった今、貴様の罪をこの場に浮かびあがらせてくれる! リーインカーネーション!」 ルネの 天英星バルロンのルネの技はもちろん、その力を見事に発揮して、氷河の犯した数々の罪の姿をその場に浮かびあがらせ始めた。 「どうだ。これでもまだ、自分は罪を犯したことがないと言い張るか!」 やはり大声で、そして どこか楽しそうな口調で、ルネは氷河に向かって言い放った。 が、次の瞬間、インド木綿を引き裂くような悲鳴を静寂の法廷に響かせることになったのは、氷河ではなくルネの方だったのである。 「な……なんじゃこりゃあ〜っ !? 」 彼が驚愕したのも当然のこと。 氷河の身体から次々に浮かび上がってきた彼の罪は――そのすべてが もろに18禁映像だったのだ。 氷河が組み敷いている相手は瞬。 総天然色3D、しかも尋常の数ではない。 「な……なんなんだ、これは!」 ルネの端正な顔が、ひくりと引きつる。 それは徐々に恐怖の色を帯び、ついには彼は恐慌の様相を呈することになってしまったのである。 「こ……この神聖な法廷に、こここここんな、うわ、手が、何だ、あの脚、爪先、馬鹿者、そんなに腰を動かすなっ! うわぁぁぁ〜っ !! 」 タダでそんな映像を見ることができるのだから、素直に喜べばいいのに――というのは、氷瞬ファンの考えである。 やおい趣味のなかったルネは、モザイク修正すら入っていないそれらの映像に周章狼狽し、泡を食い、挙措を失い、そして我を失った。 このままでは、広い法廷が氷河の罪の映像であふれ、押し潰されてしまう。 パニックに陥った彼は、生まれて初めて経験する大混乱の中で、それでも何とか この映像を消し去る方法を思いついた。 つまり、氷河の命を奪ってしまえばいいのだ――と。 「私のこの鞭は、犯した罪の数だけ君の身体に巻きつき、そして君の身体を切り刻む! 食らえ、ファイヤーウィップ!」 思い立ったが吉日である。 彼は、手にしていた鞭を氷河めがけて振りおろした。 尋常でない速さと勢いで、ルネの鞭が氷河の身体に幾重にも巻きついていく。 ルネの鞭は5秒とかからぬ間に氷河の身体を覆い尽くし、何重にもルネの鞭が巻きついた氷河の身体は、もはや顔も見えず、腕も見えず、脚も見えず、ほとんど枯葉のかけらを全身にまとったミノムシ状態だった。 「ふははははは……!」 これでは氷河の身体は鞭によって輪切りにされるどころではなく、原子の状態にまで還元することになるに違いない。 そう考えて、ルネは、静寂の法廷に高笑いを響かせた。――のだが。 |