瞬のポストの仕事がポストの仕事でなかったことが発覚したのは、それから1ヶ月後。
青銅聖闘士たちの銀行口座の管理をしていた沙織が血相を変えて瞬の許に駆けつけてきた時だった。
「瞬、いったい、あなた、何をしたの! 昨日、あなたの口座に突然、200万のお金が振り込まれてきたわよ !? 」

「え……? あ、お給料日だ!」
沙織の言葉を聞いた瞬が、嬉しそうに顔をほころばせる。
が、瞬以外の青銅聖闘士たちは そういうわけにはいかなかった。
なにしろ未成年の1ヶ月のバイト代としては――いくら夜間のバイトとはいえ――、沙織が口にした金額は常識的なそれとは桁がひとつ違っていたのだ。

「U便局って、そんなに待遇がいいのか〜?」
間の抜けた声を響かせた星矢を、
「そんなはずがないだろう!」
氷河が即座に怒鳴りつける。
ともあれ、瞬が毎晩真面目に通っている仕事場はU便局ではなくホストクラブであること、瞬が従事している仕事はポストの仕事ではなくホストの仕事だということが、その日 瞬の説明によって、少々遅ればせながら氷河の知るところとなったのである。

「ホ……ホストだとーっっ !? 」
その事実を知った氷河が、口から泡を吹いたことは言うまでもない。
そして、星矢や紫龍たちは、何よりもまず、瞬がそんな仕事を1ヶ月もの間 勤め続けてこれたという事実に驚嘆することになった。

「色々勉強になる仕事なんだ。お客様の中には お仕事やプライベートで疲れたり悩んだりしてる人がいっぱいいて、それでもみんな頑張ってるんだなー……って、僕、逆にお客様たちに励まされたりもしてるんだよ」
瞬が主張するホストの仕事の有意義さなど、誰も――特に氷河は――まともに聞ける状態ではなかった。






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