聖闘士になって氷河と再会してからも、瞬は、最初のうちは、彼が変わったと意識することはなかったのである。
離れて過ごしていた時間の分だけ背が伸び、身体つきもたくましくなり、表情も大人びたものになってはいたが、氷河の瞳の色は幼い頃のそれと どこも変わらない空の色をしていたし、何より彼は、聖闘士になってからも、“クール”とは程遠い場所に立つ男だったのだ。

氷河が変わったのは、十二宮での戦いのあとだった。
まず、極端に口数が減った。
そして、滅多に感情を表に出さなくなる。
最も大きな変化を見せたのはその瞳の色で、十二宮での戦いの後、氷河の瞳は、失われてしまった何かを恋い求めているような海の底の色になってしまったのである。

十二宮での戦いは、アテナの聖闘士たちの中でも 氷河にとって最も過酷だった。
彼はその戦いの中で恩師を亡くした――自身の手で倒した――のだ。
そんなつらい出来事のあとだっただけに、瞬は彼の変化を不自然とは思わなかった。
それは致し方のない変化――むしろ、そんな経験をして変わらない方がおかしいとさえ、瞬は思ったのである。
瞬は、そんな氷河が痛々しく、そして哀しかった。






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