翌朝目覚めて、それぞれの枕元に 恋しい人からのラブレターを見付けた氷河と瞬は、即座に、昨夜 二人の恋心たちがそうしたのと全く同じ行動に出た。 ほとんど同じタイミングで自室を出、廊下で出会い、互いの名を呼んで固く抱き合う。 恋心たちと違っていたのは、それから二人が少し迷う素振りを見せてから、揃って氷河の部屋に入っていったことだけだった。 もちろん、朝食の時刻になっても――それどころか、昼食の時間が過ぎても――、彼等は仲間たちの前に姿を現わさなかったのである。 「しっかし、こんなんで済むことに、氷河も瞬もあんな大騒ぎしてたのかー」 氷河の部屋に閉じこもって出てこない仲間たちを呼びに行くような不粋な心を、もちろん 星矢と紫龍は持ち合わせていなかった。 仲間の姿が二つ欠けたラウンジで、氷河(の恋心)と瞬(の恋心)が残していった彼等のラブレターの下書きを見て、星矢がぼやく。 それには紫龍も同感らしく、彼もまた苦笑を隠さなかった。 二人(の恋心)が3時間以上の時間をかけて書き上げた、瞬の胸を打ち、氷河の胸を打つ大傑作のラブレター。 それは、 『瞬。俺はおまえが好きだ』 『氷河、僕は氷河が大好きだよ』 という、シンプルこの上ない代物だったのだ。 その一言に 命と思いのすべてが凝縮されている言葉というものが、確かにこの世には存在するらしい。 氷河(の恋心)と瞬(の恋心)の願いは、こうしてめでたく成就されたのだった。 Fin.
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