どこぞの国の政治家とは異なり、アテナは、氷河の要求に実際に“善処”し、そして、実現してくれた。 労働組合を作らないことを条件に、彼女は、聖域で聖闘士全員を集めたコンベンションパーティまで開催してくれたのである。 瞬は、氷河以外にも大勢の仲間がいることを知り、また幾人かの聖闘士の友人もできた。 大勢の 瞬は、なによりも、自分が何者であるのかを氷河に隠す必要がなくなったことが嬉しくてならなかった。 とはいえ、アテナの 同居人に秘密を持つ必要がなくなったのは氷河も瞬と同様で――聖闘士であることを隠す必要がなくなった氷河は、その力を抑制することを完全にやめてしまったのだ。 主に、瞬と過ごす夜に。 「氷河、もうだめ。もう無理だよ、許して」 「嘘をつくな。アテナの聖闘士なら、まだまだ余裕のはずだ。アテナの聖闘士がこの程度のことで音をあげてどうする」 「そんな……!」 瞬が氷河の手から逃れようとしても、氷河は決して瞬の逃亡を許してくれなかった。 聖闘士の戦闘能力とは無関係の技なのだろうが、氷河の愛撫は 北欧の神闘士100人と戦う方が よほど楽なのではないかと思えるほど、秘密を持たなくなった氷河の要求は過酷だった。 禍福はあざなえる縄のごとし。 恋の歓喜と苦痛は紙一重のものである。 Fin.
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