おじちゃんは、『ここから ちょっと行ったところ』って言ってたから、ナターシャ、公園までは歩いていくんだと思ったんだケド、おじちゃんの言う“ちょっと”は“車でちょっと”だった。 ナターシャは おじちゃんの運転する車で、綺麗で大きな公園にオデカケしたの。 公園は高いところにあるから、途中まで車で行くんだって。 車の中で、ここはトーキョーじゃなく、センダイっていうところなんダッテ、ナターシャ、教えてもらった。 初めて聞く町の名前。 ナターシャが、 「車が千台あるから、センダイなの?」 って訊いたら、おじちゃんとおばちゃんは おかしそうに声をあげて笑った。 多分、センダイに 車は 千台の百倍くらいあるだろうって。 なのにセンダイなんて、変なの。 ナターシャが そう言ったら、おばちゃんが、 「きっと、車が千台ある時に、町の名前をつけちゃったのね」 って。 ナターシャが、 「ソッカー」 って頷いたら、おじちゃんとおばちゃんは また笑った。 おじちゃんとおばちゃんが すごく楽しそうだったカラ、ナターシャも一緒に笑っちゃったヨ。 おじちゃんの車で行った公園は、青葉山公園っていう名前の公園だった。 おじちゃんとおばちゃんと おんなじ名前。 おじちゃんとおばちゃんの名前は 青葉さんっていうんだって。 青葉山公園は おじちゃんとおばちゃんの公園なの? って、ナターシャが訊いたら、 「そうだったら、よかったのにね」 って。 でも、青葉山公園は みんなの公園で、その方がいいんだよって。 ナターシャも そう思ったヨ。 青葉山公園は、山の上にある公園で、ナターシャたちは 途中で車を降りて、そこからオサンポ。 山の上までは、森の中にある ツヅラオリの遊歩道を歩いていくんダッテ。 遊歩道の脇には いっぱい木があって、綺麗な緑の葉っぱが作る影が涼しくて、風が すごく気持ちよかったヨ。 道を上ったところに、馬に乗ったブシの銅像と 小さなお城みたいなのがあった。 そこから、山の下にある町を見渡せるノ。 「あそこを流れているのが広瀬川という川だよ。あの川の向こうに、私の病院があるんだ」 おじちゃんが 町を指差して、おじちゃんの病院のある場所を教えてくれた。 広い町の中を流れてる川。町の向こうには、海が見えて、山も見えた。 ナターシャ、すごいって思ったヨ。 ナターシャが いつも行ってる光が丘公園は、ジャングルジムのてっぺんに登っても、海も山も見えないカラ。 おじちゃんと おばちゃんは優しかった。 おばちゃんは ナターシャのマーマみたいに綺麗じゃないケド、ナターシャのマーマみたいに いつもにこにこしてナターシャを見てる。 おじちゃんは ナターシャのパパみたいにスマートじゃないケド、ナターシャに アイスクリームを買ってくれた。 ずんだアイスっていうアイスクリーム。 “ずんだ”っていうのは 枝豆のことなんだって。 枝豆のアイスクリームなんて、ナターシャ、初めて食べたヨ。 青葉山公園は、光が丘公園みたいに 水遊びができる噴水やターザンロープはなかったけど、すごく気持ちよくて楽しかった。 ナターシャは いっぱい歩いて、おじちゃんとおばちゃんと いっぱい お話をした。 ナターシャが何か言うたび、おじちゃんとおばちゃんは、『すごいねー』『ナターシャちゃんは お利口だね』って言ってくれて、ナターシャ、ちょっと得意だったヨ。 お昼は、山を下りて、町の中にあるレストランで スペシャルお子様ランチを食べて、おじちゃんのおうちに帰ってから、ナターシャは いつもより長く お昼寝した。 夜は、おばちゃんが お風呂に入れてくれて――お風呂からあがってパジャマに着替えたナターシャを、おばちゃんは ぎゅうっと抱きしめて、 「大丈夫よ、ナターシャちゃん。大丈夫。私たちが必ず ナターシャちゃんを守ってあげるから」 って、何度も言った。 ナターシャ、よく意味が わからなくて、 「ナターシャ、元気ダヨ。ナターシャは強いんダヨ」 って言ったノ。 そしたら、おばちゃんは もっと ぎゅうってナターシャを抱きしめた。 |