マウス王国、アップル王国、スリープ王国、レイク王国、シレーヌ王国と、各国を巡っているうちに、実は心の中では、『ナターシャは 誰にも 嫁にやらんぞー!』と思っているパパ王様も、さすがに心配になってきたのです。 年齢的に仕方のないことなのですが、素敵な王子様を探しているのはマーマお妃様ではなく ナターシャ姫なのに、王子様たちがダンスを申し込むのはマーマお妃様ばかり。 ナターシャ姫は、ほとんど無視。 これには、いつも明るく元気なナターシャ姫も さすがに傷付いてしまうのではないかと、パパ王様には それが案じられたのです。 ナターシャ姫は、全然平気で、かなり元気でしたが。 「素敵な王子様探しの旅に出たおかげで、ナターシャは、パパとマーマが世界でいちばん強くてカッコよくて綺麗で優しいことがわかったヨ。よその国の王子様は、どこの国の王子様も、パパよりカッコよくないし強くないし、マーマより綺麗じゃないし優しくなくて、ナターシャのタイプじゃないヨ。チルドレンスクエアのターザンロープの方が、ずっと楽しくて、ナターシャのタイプだヨ」 「ターザンロープの方が?」 どうやらナターシャ姫は、ライトヒル王国のチルドレンスクエアで大人気の ぐるぐるまわって遊べるターザンロープが恋しくなってしまったようでした。 馬車での旅は、手足を自由にのばせなくて 窮屈ですからね。 マーマお妃様は 微笑んで、そんなナターシャ姫を抱き寄せました。 「じゃあ、そろそろ 僕たちのおうちに帰ろうか。ナターシャちゃんの素敵な王子様は、きっとまだ ナターシャちゃんに会わない方がいいと思っているんだよ」 「ドーシテ? ナターシャの王子様は恥ずかしがりやさんナノ?」 「それはどうか わからないけど……。ナターシャちゃんが ナターシャちゃんの理想の王子様に出会うっていうことは、ナターシャちゃんが 氷河や僕より 王子様の方を好きになるっていうことだからね。ナターシャちゃんが ナターシャちゃんの王子様に出会ったら、きっとナターシャちゃんは氷河と一緒にいられなくなる。そうなったら 氷河が寂しくて泣いちゃうから、ナターシャちゃんの王子様は、その時が できるだけ先になるよう、隠れてくれているんだと思うよ」 「えっ」 マーマお妃様の言葉に、ナターシャ姫はびっくり。 そして、真っ青になってしまいました。 「ナターシャ、そんなの嫌ダヨ! ナターシャは、いつまでもずっと パパとマーマと一緒にいるんダヨ! パパとマーマと一緒にいられなくなるくらいナラ、ナターシャは 王子様になんか エイエンに会えないままでいいヨ!」 「ナターシャ……」 ナターシャ姫の真剣な訴えに、パパ王様は大感激。 「よし、そうと決まれば、さっさと 我々の国に帰ろう。ナターシャに、新しいドレスを買ってやらねばなるまい」 「新しいドレス !? ヤッター!」 どうして新しいドレスを買ってもらえるのか、ナターシャ姫には、その理由は わかりませんでした。 けれど、ここで、『ドーシテ、ドレスを買ってもらえるノ?』と訊いてしまうほど、ナターシャ姫は おばかさんでもありませんでした。 パパ王様が 買ってやらなければならないと言っているのですから、ナターシャ姫は 素直に笑顔で『パパ、アリガトウ!』と言えばいいのです。 ナターシャ姫は、マーマお妃様に似て 大層 賢い お姫さまでした。 寝転がると とても気持ちがよくて、ピクニックも楽しめるグラススクエア。 どんな子供たちも大喜びするチルドレンスクエア。 そこをくぐる すべての人の心が弾むライトアーチ。 世界中の鳥が集まってくるバードサンクチュアリ。 誰もが優しい気持ちを抱いて散策するフレンドシップロード。 あらゆる人の心を癒すレストウッズ。 ライトヒル王国は、観光名所がいっぱいある世界一の観光立国です。 ライトヒル王国を見ずに、結構と言うなかれ。 一生に一度は、ライトヒル王国に旅行に行ってみることをお薦めします。 ちなみに、ライトヒル王国で いちばんの観光名所は、何といっても、ライトヒル王国の王様一家が暮らしているライトヒル王国王宮です。 運がよければ、お庭をお散歩している 世界一カッコよくて強いパパ王様と 世界一綺麗で優しいマーマお妃様と 世界一可愛いナターシャ姫の姿を見ることができるかもしれませんよ。 Fin.
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