パパ、どっちが好き?






ナターシャは、パパが大好き。
ナターシャのパパは、すごくカッコいい。
きっと、世界一。
それで、とっても綺麗で、とっても優しい。
それに、すごく強い。
いつもナターシャのことを、守ってくれる。

ナターシャは、可愛いお姫様だから(って、マーマは いつも言ってる)、よそのおうちの子よりピンチにオチイリやすいんダヨ(って、星矢お兄ちゃんや紫龍おじちゃんが言ってた)。
デモ、ナターシャは、いつも全然 恐くない。
だって、ナターシャがピンチの時には、絶対に パパが助けに来てくれるって わかってるカラ。
ナターシャのパパは、ナターシャの白馬の王子様で、ナターシャの白鳥の騎士様なんダヨ。
ナターシャを、絶体絶命のピンチから救ってくれるパパは、ほんとにほんとにカッコいい。

デモネ。
星矢お兄ちゃんや紫龍おじちゃんは いつも、パパのこと、元マザコンとか、現親馬鹿とか、顔だけ男とか、甲斐性なしとか、我儘野郎とか言うノ。
星矢お兄ちゃんや紫龍おじちゃんは、パパが うんとちっちゃい頃からのオトモダチのオサナナジミで、固い信頼と絆で結ばれた仲間。
ナターシャがパパのところに来るまでは、“家族より強い絆で結ばれた仲間同士”だったんだケド、ナターシャが来てからは、“家族とおんなじくらい強い絆で結びつけられた仲間同士”にシフトチェンジしたんだって。

星矢お兄ちゃんが、
「ワタシたちの絆って、そんな薄っぺらいものだったのね。ひどいワッ!」
って、メロドラマ風に(って、紫龍おじちゃんが解説してくれタ)言ったら、パパは、
「当たりまえだ」
って。
星矢お兄ちゃんは、パパにそんなこと言われても、けらけら笑ってタ。
ナターシャだったら、パパに、『俺とナターシャのキズナは薄っぺらのぺらぺらだ』なんて言われたら、悲しくて泣いちゃうノニ。

ナターシャとパパの絆が薄っぺらいって言われたわけじゃないのノニ、ナターシャが泣きそうな顔をしタラ、マーマがパパと星矢お兄ちゃんを叱ってくれタ。
「ナターシャちゃんが混乱して、困ってるでしょう。ナターシャちゃんは、素直で まっすぐな心の持ち主なの。そういう冗談は、ほどほどにして」
って。
それで、ナターシャを抱っこして、パパと星矢お兄ちゃんたちの“仲間の絆”について、説明してくれたヨ。
パパと星矢お兄ちゃんたちの絆は、とっても強くて固くて厚くて頑丈で、絶対に壊れたり切れたり消えたりしないんだっテ。
それがわかってるから、パパたちは パパたちの絆が薄っぺらいなんて、嘘の冗談を言うんだって。
そんな嘘の冗談を言っても笑っていられるくらい、パパと星矢お兄ちゃんたちの絆はキョーコなんだよって。

星矢お兄ちゃんたちが、パパのこと、顔だけ男とか我儘野郎って言うのも、固い絆で結ばれた仲間同士の嘘の冗談なんだって。
『顔だけ男』は『大好き』っていう意味で、『我儘野郎』は『信じてるよ』っていう意味なんだって。
マーマがそう言うと、星矢お兄ちゃんは、
「気持ちワリー」
って言って、マーマに睨まれタ。

マーマの言うことの方がホントで、星矢お兄ちゃんの言うことの方が 嘘の冗談なんだと、ナターシャも思ウ。
星矢お兄ちゃんや紫龍おじちゃん以外の人はみんな、ナターシャのパパのこと、超カッコいいとか、イイオトコとか、すごいイケメンとか言って、みんなナターシャのこと羨ましがるモン。
蘭子ママも 吉乃も 公園のお友だちも。
デモ、もしナターシャ以外の世界中の人たちが パパのことを『カッコよくない』って言っても、ナターシャは、それは嘘の冗談だと思う。
だって、パパはカッコいいもん。
いつもナターシャのことを守ってくれル。
ナターシャのパパは、絶対に、世界一カッコいいパパだヨ。


そして、ナターシャのマーマ。
マーマのことは、みんなが褒める。
綺麗で、強くて、優しくて、頭もよくて、甲斐性もあって、人徳もあるって。
マーマには、星矢お兄ちゃんや紫龍おじちゃんも、固い絆で結ばれた仲間同士の嘘の冗談も言わない。
マーマの欠点は、パパに甘すぎることだけだって言うくらい。
マーマは、今より若かった頃には、清らかすぎて、神様に目をつけられて誘拐されそうになったこともあるんだって。
マーマは、それくらいキレイな心の持ち主なんだって。

マーマは とっても綺麗で、とっても優しい。
パパが、雪が真っ白にしちゃった世界なら、マーマは、お花でいっぱいの あったかい春の野原。
ナターシャが悲しくて寂しい時、パパはナターシャを ぎゅって抱きしめてくれるけど、マーマは、
『氷河はナターシャちゃんを大好きだよ。僕も星矢も紫龍も吉乃さんも、みんながナターシャちゃんを大好きだよ』
って言ってくれるル。

ナターシャが悲しくて寂しい時、ナターシャを悲しくなくしてくれるのはパパだけど、ナターシャをずっと寂しくなくしてくれるのはマーマなの。
マーマがいてくれないと、ナターシャはきっと、いつもパパに抱っこしていてもらえないと不安で泣いちゃうナターシャになっていたと思ウ。
星矢お兄ちゃんと紫龍おじちゃんに そう言ったら、星矢お兄ちゃんたちは、
「そうだろうなあ」
って。

パパがナターシャのパパになることに、最初はみんな 反対だったんだって。
紫龍おじちゃんも、城戸邸の人たちも、聖域の人たちも反対だったんだって。
その時には 星矢お兄ちゃんはまだトーキョーにいなかったケド、もしいたら、やっぱり反対していただろうって、言った。
パパは、自分のことだって放っとくことが多いノニ、ナターシャみたいに小さな女の子の世話なんかできるはずがないって、みんなが思ったんだって。
パパがナターシャのパパになれたのは、マーマが パパと一緒にナターシャを育てるって言ってくれたカラ。
それなら大丈夫だろうって、パパがナターシャのパパになることを、みんなが許してくれたんだって。

マーマは、それくらい、みんなに信用されてるんダヨ。
パパはもともとマーマが大好きだったけど、マーマのおかげでナターシャのパパになれたから、それまでより もっとずっとマーマのことを大好きになったノ。
それで、パパは、ナターシャのおかげで、マーマをパパの娘のマーマにできたんだって言って、時々ナターシャに『ありがとう』を言うヨ。
『俺に家族ができたのは、ナターシャのおかげだ。瞬を俺の家族にできたのは、ナターシャのおかげだ。ナターシャは、俺の幸運の天使だ』
って。

マーマのおかげでナターシャのパパになれたから、パパは いつもマーマの言うことをきく いい子。
星矢お兄ちゃんは、『氷河は いい子の振りをしてるだけだ』って言うし、紫龍おじちゃんは、『氷河は いつも嬉しそうに 瞬の尻に敷かれているな』って言う。
デモ、ナターシャは、マーマがパパの上に座ってるのは見たことないから、きっとそれも“固い絆で結ばれた仲間同士”の嘘の冗談なんだと思っテルヨ。

マーマも、パパの無茶振りに呆れながら、パパを好きなんだって。
「瞬は氷河を放っとけないだけだろ」
っていうのが、星矢お兄ちゃんの意見で、
「放っておけないと思わせた時点で、氷河の勝ちだ」
っていうのが、紫龍おじちゃんの見解ダヨ。
ナターシャは、パパがすごくカッコいいから、マーマはパパを大好きなんだと思ってル。
絶対 そうに決まってるヨ。






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