ナターシャは、パパに、ナターシャとマーマのどっちをいっぱい好き? って訊いたノ。
いちばん好きなのは どっち? って。
それは とっても大切なことだと思ったカラ。
マーマはそれを見ていて、大笑いした。
にこにこマーマが 大笑いマーマになった。

ナターシャは、パパに、そんなに変なことを訊いたノ?
そんなに おかしなことを訊いた?
そんなことないよネ?
もしナターシャが変なことを訊いたんだったら、マーマがナターシャに、
「そんなことを訊いちゃ駄目だよ」
って言ってくれるはずだもん。
デモ、マーマは そんなこと言わなかった。
パパの答えを ちゃんと確かめてって、応援してくれた。

それはパパがいちばん好きなのは、ナターシャじゃなくマーマだから?
マーマには、パパのいちばんは自分だっていう自信があって、だからパパの答えを確かめて報告してって、ナターシャに言うの?
そうなのカナ?
そうなのかもしれナイ。
だって、“パパとマーマ”は、“パパとナターシャ”の何十倍も長い間、一緒にいたんだモノ。
パパがナターシャを好きなのの何十倍もマーマを好きだったとしても、ちっともおかしくナイ。

デモ――デモネ。
“好き”にはいろんな“好き”があって、誰かを好きな気持ちや 何かを好きな気持ちは たくさんあるって、マーマは言ってタ。
たくさんあった方がいいって、マーマは言ってタ。
パパが いちばん好きなのは誰なのかっていうことは、ナターシャには とっても大事なことなんだケド――デモ、ダカラ、マーマが“好き”に順番をつけようとしてるナターシャを叱っても、変じゃないって、ナターシャは思うノ。
“好き”には いろんな“好き”があるのが当たりまえなのに、たくさんあった方がいいのに、
それに順番をつけたら、いちばんじゃない“好き”が悲しむかもしれナイ。いじけちゃうかもしれナイ。

ママは――いつものマーマなら きっと、
『“好き”に順番をつけたりしちゃ駄目だよ、ナターシャちゃん』
って言うと思ウ。
なのに、マーマはナターシャを叱らないで、にこにこ笑っテル。
それは、ドーシテ?
ナターシャはそれが不思議だったカラ、次に 星矢お兄ちゃんと紫龍おじちゃんが ナターシャのおうちに来てくれた時に、お兄ちゃんたちに訊いてみたんダヨ。
マーマは病院にお医者さんのお仕事をしに行ってて、おうちにいなかったから、ちょうどよかったノ。
パパは おうちにいたけど、相変わらず、『うーんうーん』って悩んでて、オハナシにならなかった。


「『パパは、ナターシャとマーマのどっちが好き? どっちがいちばん?』って訊いたら、マーマは大笑いしたノ。それで、パパの答えを突きとめるように ナターシャを応援してくれたノ。いつものマーマなら、そんなことしちゃダメって言うと思うのに、“好き”に順番つけたりしちゃダメって言うと思うのに、言わないノ。どうしてカナ?」
って。
「マーマは、自分がパパのいちばんだって自信満々ナノ?」
って。

そしたら。そしたらネ。
ナターシャの話を聞いた星矢お兄ちゃんと 紫龍おじちゃんは、マーマより大きな声で 笑い出したんダヨ。
絵に描いたら、大きな字で『げらげらげら』ダヨ。
星矢お兄ちゃんは もともと髪の毛が撥ねてるケド、紫龍おじちゃんまで 髪の毛を逆立てて、マーマのローリングディフェンスみたいに 長い髪をぐるぐるさせて、おなかを抱えて笑い出しタ。
ナターシャ、わけがわからなかったヨ。






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