最愛の弟を愚弄され(たと思って)閻魔大王も裸足で逃げ出すほどの迫力で怒髪天を衝いている一輝と、恋の熱に浮かれて 絶対零度が5700度超になっている氷河。 その二人がぶつかった結果、倒れたのは、一輝でも氷河でもなく、キックボクシング部の部室だった。 半壊状態になった部室の床を 必死になって掃除する 旧式お掃除ロボットの健気な姿に、駆けつけた野次馬たちは皆、涙したという。 そして、一輝と氷河のただ一度の一瞬の衝突で、城戸学園高校キックボクシング部の命運は決まったのだった。 なにしろ 部室を半壊にするという大変な不祥事を起こしたのである。 キックボクシング部は 問答無用で廃部。 城戸学園高校キックボクシング部は、その日をもって、2年間の栄光の日々に終止符を打ったのだった。 キックボクシング部が廃部になったことによって、所属する部を失った120名の部員をまとめあげ、新たに学園生活厚生部を作ったのは瞬である。 瞬は、キックボクシング部の部員たちに、この機会に 他部に移籍することを勧めたのだが、その瞬が行き場のない元キックボクシング部員の受け皿として 新しい部を作るつもりでいることを知ると、彼等は全員 瞬の作る新部への入部を決めたのだった。 男子と わかっても、絶世の美少女の笑顔の威力は絶大で、男子とわかっているからこそ、その力は女子にも及んだ。 学園生活厚生部の部員数は、今も着々と増えている。 学園生活厚生部には もちろん、一輝、紫龍、氷河、星矢も在籍。 そういう意味で、学園生活厚生部は 名前を変えたキックボクシング部と言えた。 しかも、瞬は、沙織を学園生活厚生部の部長として招聘し、快く応じてもらったのだ。 沙織が キックボクシング部を目の敵にしていたのは、星矢たちキックボクシング部の面々を 近くで見物していたい――もとい、監督していたい――という、退屈しのぎの好奇心――もとい、責任感――から出たことだったらしい。 そこを見透かしていた瞬の慧眼、そして 一輝以上の瞬の政治力に、星矢たちは大いに感嘆し、感心し、感動したのである。 その後、何を考えたのか、瞬は 氷河と“お付き合い”を始めてしまった。 瞬が 賢明な人間なのか、そうではないのか。 星矢たちは、いまだに判断できずにいる。 Fin.
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