三ツ星学園にはナターシャちゃんに似た子はいないけど、学園から10分くらい歩いたところに大きな小学校があるから、私は まず そこに探しに行ってみることにした。
次の日の午後、二人を肩に乗せて、私は 四ツ星小学校の校門の脇に出掛けていったの。
そこで校門を出てくる小学生を見てれば、ナターシャちゃんがいるかどうかが わかるでしょ。だから。
見てる間、小人さんたちと いろんな話をした。

小人さんの名前は、金髪で大きい方が氷河。
小さい方が瞬。
いっぱい お喋りをしてくれる方が、瞬だよ。
氷河は ほとんど口をきかなくて、いつも 私を睨むみたいに見てる。

ほんとは普通の大人サイズの小人さんたちが 小さな小人さんサイズでいるのは、ワープみたいに速い光速の空間移動を 人に見られて驚かせないため。
大きいままでワープするのを 他の人に見られたら、『人が急に消えた』とか『人が急に現れた』って思われて、大騒ぎになるからなんだって。

目の前を通り過ぎていく小学生たちを眺めながら、私は小人さんたちに、自分のことや学園のことも話した。
私が星を好きなこと。
図書室の絵本は ほとんど読んじゃったこと。
学園の先生たちのこと。
学園にいる他の子供たちのこと。

小人さんたちは、私に、ナターシャちゃんの話をしてくれた。
ナターシャちゃんには お父さんとお母さんだけじゃなく、おじさんたちもいて、公園には お友だちもたくさんいること。
張り切りすぎて失敗しちゃったこと。
歌った歌。描いた絵。
ナターシャちゃんのお父さんと お母さんは ほんとに とってもナターシャちゃんを大好きで、仲良しだったんだなーって、思った。

四ツ星小学校に何日か通って―― ナターシャちゃんは見付からなかったけど、小人さんたちは そんなに がっかりしてないみたいだった。
もう3年も探してるから、見付からないことに慣れちゃってて、いちいち がっかりしないのかもしれない。
でも、私はがっかりしてた。

三ツ星学園にも四ツ星小学校にもナターシャちゃんがいないことがわかったら、小人さんたちは 別のところにナターシャちゃんを探しに行っちゃって、もう私のところには来てくれなくなる。

私は、そうなるのが怖くて、『昨日まで学校を休んでた人が、今日は来るかもしれないよ』って言って、小人さんたちと小学校に通い続けたの。
四ツ星小学校に通い始めて、5日目。
校門からは、もう低学年の子たちは出てこない。
小人さんたちと一緒にいるのは、もうこれ以上は 無理かもしれないって、小人さんたちを肩に乗せたまま、私が項垂れた時。
なんだか すごく変な人たちが私の前に来て、私を通せんぼした。

髪の毛があっちこっちに飛んでる子供と大人の真ん中くらいの人と、すごく長い髪の男の大人の人。
何だろう。何て言えばいいんだろう。
きっと悪者じゃないのに 怖いっていうか、背が高いから よくわかんないけど、多分 すごくカッコいいんだけど、普通の人間じゃなくて 宇宙人ぽいっていうか、ほんと 変な感じの人たち。
その変な感じの人たちが、私の前に立って、私に(?)話しかけてきた。

「見付けた。こんなとこにいたのか。何の冗談だ、その小さな身体は。どんなに小さくなったって、どうせ小宇宙でわかるのに」
変な二人は、私じゃなく二人の小人さんたちに話かけてるんだ。
私が そう気付いた瞬間、世界が急に真っ白になった。
学校も門も道もなくなった
小学校の門の前の道路を走ってた車も消えて、どんな音も聞こえなくなった。
私、初めて小人さんたちに会った時、小さい小人さんが話してくれたことを思い出したの。
人や物を異次元に飛ばす技を使える敵。
小人さんたちのナターシャちゃんを異次元に飛ばそうとした悪者。
この変な二人が 小人さんたちが戦ってた敵なんだ。






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