第三章  氷河





 俺が初めて瞬を見たのは、オレンジ色に包まれた夕暮れの小さな児童公園だった。

 長い影を落とすブランコに寂しい音を響かせながら、瞬は一人でブランコを揺らしていた。

 お袋がその場に立ち止まり、じっと瞬を見詰めていたから、気になって、俺も瞬の方に視線を巡らせたんだ。そしたら、そこには、なーんか物寂しげな様子の、えらく綺麗な女の子がいるじゃないか。で、ませガキだった俺は思ったもんだ。
 この子も俺と同じ小学校に入るだろうから、今度見かけたら、俺の彼女になってくれと頼んでみよう――と。

 俺は、その夜起こる悲劇を予感してもいなかった。






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