「瞬ちゃん、あなたは間違ってるわ!」
私は、可愛い可愛い瞬ちゃんを頭ごなしに怒鳴りつけた。

「瀕死の友を救おうとしている時、その大切な友を見下す格好で小宇宙を燃やすなんて、よくないことよ! それじゃあ、どう見たって、強者が弱者を哀れんでいるようにしか見えないわっ!」

「あ……哀れむなんて、そんなこと……。僕はただ、小宇宙を燃やすのに、立っている方が……」

「駄目よ、だめだめだめっ! なってないわっ! 本当に氷河を哀れんでるんじゃないっていうのなら、視線を同じ高さに置いて、氷河をしっかり抱きしめながら、小宇宙と心と身体とで氷河を包んであげなくっちゃ!」
「だ……抱きしめながら……?」
「そーよ、当然でしょ!」
「あ……あの、でも……」

瞬ちゃんは、私のその言葉を聞いて頬を上気させた。
これは、どう見たって、照れて恥ずかしがっている──のよね?
てことは、天秤宮以前に氷河と瞬ちゃんは既にデキていたっていう、私の仮説は間違っていたのかしら……?

ううん。
この際、そんなことはどーでもいいわ!
とにかく、私には、天秤宮でのこの間違った展開を正してやる義務があるんだから!

「そうね。まず何をおいても、氷河が生きていることを確かめるのが先決よね」
「生きてますよ。だって小宇宙が……」
「小宇宙が何よ! そんな不確かなもの! 凍りついた身体を温めようとしているのに、その身体が生きてることを確かめないなんて、ほんとに馬鹿げてるわ!」

「そ…そうかもしれないですね……」

私の迫力に気押されたように、瞬ちゃんが氷河の横に膝をついて、その手を氷河の胸に置く。
あああっ、その手の白さ、指の細さに、私、もう、くらくらよっ!

でも、ここでミーハーしてる場合じゃないのよね。
私は、気を引き締めたわ。

「あの……生きてる……と思いますけど……」
「聖衣のチェストパーツの上から確かめたって、心臓が動いているかどうかはっきりわかるもんじゃないわ! いっそ、脱がせちゃいなさい!」
「そ……そんなこと……」

あ〜、瞬ちゃん、ためらってる。
ためらう姿も可愛いわ。
でも、そうね。
脱がすのは、確かにやり過ぎかもね。

「じゃあ、心臓はどうでもいいわ。次は、氷河が呼吸しているかどうかを確認するのよ!」

私に命じられた瞬ちゃんは、私の方をちらちら見ながら、その手を氷河の口元にかざしてみせた。
でも、そんな確かめ方で、このが満足すると思ったら大間違いよ!

「そんな確かめ方、だめだめだめっ!」
私は、もちろん、NGを出した。
だって、そんな確かめ方、歴史的事実と違うんだもの。

「じゃあ、いったい、どうすれば……」

「唇には唇よ! 熱を測るのだって、唇で唇に触れるのがいちばんいいって言うじゃない。それに、もし呼吸が止まってたら、すぐに人工呼吸に移れるようにしなくちゃ!」
「く……唇……?」
「そーよ! 常識でしょ!」

瞬ちゃんは、なぜか泣きそうな顔になった。
でも、私の剣幕に恐れをなしたらしく──ううん、私の忠告の正しいことを認めたのね──氷河の顔に自分の顔を近付けていって──。
なのに、瞬ちゃんてば、そこまでしながら、直前でストップ。
私、焦れたもんだから、瞬ちゃんの頭をがしっ☆ と押さえつけてやったわ。
ええ、もちろん、二人は熱〜い愛の口付けを交わすことになったのよ。

「あら〜、ごめんなさいねー。ちょっと手が滑っちゃって♪」
私は上機嫌で謝ったけど、瞬ちゃんは耳たぶまで真っ赤。
ほんと、可愛いったらないわ〜vv

「うん。じゃ、とりあえず、これで、氷河が生きていることは確認できたんだし、いよいよ氷河を救うために小宇宙を燃やしてみましょうか」

「……はい……」

私の指示を聞いた瞬ちゃんは、潤んだ瞳で小さく私に頷いた。






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