かなり──苦しいとは思ったけど、私は、なんとかその理由を見つけだした。 すなわち、 「だって! 氷河が狸寝入りしている可能性もあるじゃないの!」 ──という“理由”。 でも、なにしろ咄嗟に思いついた、かなり無理のある“理由”だったから、瞬ちゃんたら、私の“理由”を聞いて怒りだしちゃったの。 「狸寝入りだなんて、さん、何てこと言うんですかっ! こんな、命を懸けて闘っている最中に、そんなことする人がいるわけが──氷河がそんなことするわけないじゃないですかっ !! 」 でも、私だって、ここで負けてはいられないわ。 瞬ちゃんのあんよには、私のノーベルやおい文学賞と卒論がかかっているんだから。 「甘いわね!」 「え……」 いろんな人たちから、何度も何度も言われてきたその言葉に、瞬ちゃんが切なそうに眉根を寄せる。 あんまりたくさんの人に同じことを言われ続けていたら、誰だって、『もしかしたら、ほんとにそうなのかなぁ』程度の不安は抱くものよね。 私は、そこにつけ込んだの。 「氷河はね、あなたが好きなのよ。そうでしょ」 「あ……あの……」 驚いたり、否定したりしないところを見ると、瞬ちゃんも氷河の気持ちに気付いてはいるみたいね。 そりゃそーだわ。 氷河のアプローチはいつも、とんでもなく露骨だったもの。 「そ……それと、脚を絡めることと、どう関係があるっていうんですか」 「ほんとに読みが浅いわね。いいこと。本当はぴんぴんしている氷河が、ここで狸寝入りをしてあなたに助けられるってことは、氷河があなたに大きな借りを作るってことなのよ。そしてね、その借りを返すために、あなたにつきまとう大義名分を手に入れられるってことなの!」 「ぼ……僕、別に氷河に恩を売るつもりは──」 「あなたは売りたくなくても、氷河は買いたいのよ! 恋する男はそれっくらい姑息なものなのっ!」 その姑息さも、瞬ちゃんへの恋心ゆえと思えば可愛いもんなんだけどね。 まあ、今回に限って言うなら、氷河が死にかけてるのは歴史的大事実だけど。 |