「僕、氷河を信じてます……」

瞬ちゃんは、瞬ちゃんへの愛ゆえに悪意に満ちた私の策略をきっぱりと否定した。
確信しているみたいなのに、語調がきつくないのは、瞬ちゃんの性質なのね。
瞬ちゃんたら、健気だわ。
心を鬼にするのが辛いじゃないの……。

「そうね。私も信じたいわ。だから、信じるために確かめましょうよ」
「確かめるってどうやって」
「そりゃあ……」

あー、ほんとに、心を鬼にするのは辛いわぁ♪

「もし、氷河が狸寝入りなんて姑息な真似をしているのだとしたら、殴りつけるくらいじゃ起きたりしないと思うの」
「殴るなんて……」
「暴力の嫌いな瞬ちゃんに、この私がそんなことさせるわけないでしょ。もっと平和的に確認する方法があるのよ」
「ど……どうするんですか」

くーっ、辛い辛い辛い〜っっ♪♪♪

「男が何を考えているのか、本当のことを確かめられる場所があるでしょ」
「は?」
「男の身体の中でいちばん正直な部分の状態を確認するのよ!」
「は?」

「だーかーらーっっ !! 」


辛い辛いと浮かれている場合じゃなかったわ。
瞬ちゃんったら、ほんとに“そこ”がどこなのかわからないでいるみたい。

ああっ、でも、この強く賢く美しいこの私が、そんなはしたない単語を口にするわけにもいかないし〜っっ;;

「何をおっしゃってるんですか?」
「う……」

本気の本気で、瞬ちゃんはわかっていないみたい。
もちろん、この清らかな私が、そこがどこなのかを具体的に説明できるわけもない。

どうすればいいのか悩みに悩んだあげく、結局、私は実際の行動に出た。
実際の行動に出たと言っても、もちろん、私がそこを確かめたわけじゃないわよ!
私は、つまり、氷河の上体を抱き支えて、天秤宮の床に座り込んでいた瞬ちゃんの背中をどっかん★ と突き飛ばしたの。

細腕で有名な瞬ちゃんが私の怪力に敵うはずもなく──もとい、柔道9段・空手10段のこのの巧みの技に敵うはずもなく、瞬ちゃんは氷河の上にべちょっ★ と倒れ込んだ。


これまで私が何度も何度も夢に見た、あのシーン。
永遠に解き明かされることもないと思われていた、やおい界の謎、人類の謎。

その歴史的名場面をっ!
まさか、ナマで見れるなんてっ!


わー、瞬ちゃんのあんよ、絡んでる絡んでる〜vv


喜び浮かれる私の瞳には、あまりにも感動したせいで、熱いものがにじんできてしまっていたわ……。






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