――と、意気込んではみたものの。

メイドの仕事なんて、別に死ぬ気にならなきゃこなせない――なんてものでもないのよね。

ご主人様方は、お部屋のお掃除は、ほとんどご自分でなさるらしくって、私がしなきゃならないのは床掃除のみ。
お洗濯物はクリーニングに出すだけだし、お裁縫仕事もなし。
食事の用意は専門の調理師がいて、私はテーブルに運ぶだけ。
私のメインの仕事は、頼まれた時にお茶を出すことくらい。

どなたも我儘は言わないし、問題人物と思われた氷河様はすっかり私を無視してるし、私の仕事は楽なもんだったわ。
人によっては、やり甲斐のない退屈な仕事だったかもね。

もっとも、私は、退屈どころじゃなかったけど。
ご主人様たちのお姿を見るだけで、毎日がどきどき・はらはらの連続なんだもの。

私がお茶を持っていくでしょ。
そうすると、それを受け取った瞬様が、
さん、ありがとう」
っておっしゃって、私ごときに、にっこりと! にっこりと天使のような笑顔で微笑んでくださるのよ〜っっ!


あああああっ。
ドリーム小説って、ほんとに素敵! ――違った、メイドって、ほんとに幸せっ!

私は、毎日、雲の上を歩いてるみたいな気分だったわ。






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