でででででも、ここで、ビビっていてはいけないわ、

私がうまくこの場を切り抜けないと、お二人の間に溝ができてしまうっ!
そんなの、許されないことよ!
私のせいで、お二人が気まずくなるなんてっ!


そう考えた私は、このお屋敷に就職するために、ひたすら隠し通してきた秘密を、お二人にカミングアウトする覚悟を決めたの。
だって、自分の仕事や収入なんかより、私にとっては、お二人の愛の方がずっとずっと大切なんだもの!


「氷河様、瞬様、私の部屋にいらしてください!」
私は、お二人にそう言った。
多分、鬼気迫る表情をしてた――んだと思う。
氷河様までが、私の迫力に押されて、瞬様と一緒に私の部屋まで黙ってついてきたんだもんね。

ええ、私は必死だった。
それこそ、決死の覚悟だった。


「お二人とも、これをご覧ください」

私は、このお屋敷に来る時に、着替えやお財布よりも気を遣って大事に運んできたダンボール箱の蓋を、お二人の前で開けてみた。
6箱あったそれを全部。


それは――これまで私が自費出版してきた氷瞬やおい本の在庫と、何年も何年もかけて集めてきた氷瞬やおい本コレクション。
そう、これまで隠し通してきだけど、私は、実は、その世界ではちょっとは名の知れた氷瞬やおい本コレクターなの。
自分で本も出すし、氷瞬やおいサイトだって持ってる。
いわゆる、オタク女なのよ;;


そのオタク女の気概に満ちて、私は力強く宣言した。
「私が好きなのは、氷河様でも瞬様でもありませんっ! 私が好きなのは、氷河様と瞬様なんですっ!」

氷河様と瞬様は、私の宣言と、私の最新刊・氷瞬やおい本の表紙にあっけにとられているみたいだった。
まあ、呆然とするのも仕方ないかも。
その表紙、およーふく着てない瞬様がチェーンで自由を奪われて、氷河様にキスされてる図だもんね、なにしろ。

「わ……私、ずっと、これは私や氷瞬ファンのモーソーの産物だと思ってました。でも、そうじゃなかった。私、こないだの夜、見ちゃったんです! 氷河様と瞬様のものすごいえっち!」

「え……?」
「なにっ !? 」

「もー、私、感動しちゃいました! 私たちの直感は正しかったんだわっ! 私たち、ただのモーソー女じゃなかったんですよねっ! お二人は、愛し合ってらっしゃるんでしょう !? 」

「あ……」
「うー……」

「そんで、私、自分の書くやおいの未熟さを思い知ったんです! 聖闘士の体力と、氷河様と瞬様の愛をみくびってました! まさか、合体してから30分近くも、腰を使いっぱなしだなんて、そんなえっち、考えたこともなくて……ほんとにすみませんっ!」

私は心底から反省して、お二人の前で頭をさげた。
これまでの私は、ほんとにどーしよーもないくらい甘かったわ。






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