「…………」
「…………」

私の心からの謝罪は、お二人に通じた――のかな?
氷河様と瞬様は顔を見合わせて――それから、瞬様は真っ赤になって、氷河様の胸にお顔を埋めてしまったの。
氷河様が、そんな瞬様の肩をしっかりと抱き寄せる。

うーん。
えっちもいいけど、ここいうのもいいわぁ。


「お……おい、貴様……いや、さん……」
氷河様が、氷河様らしくもなく、どもりながら私の名を呼ぶ。

「はい、何でしょう、氷河様。誤解は解けましたでしょうか。私は、私たちは、いつでも、どんなことがあっても、氷河様と瞬様の味方です!」
「あ……あー……」

私は、氷河様のあの青い目をまっすぐに見詰め、再度きっぱり言い切った。
氷河様は――気のせいかな? ちょっと嫌そうなお顔をなさったみたいだけど。

「きさ……いや、さん。俺と瞬は――俺たちは、地上の平和の守護を第一義とした聖闘士で、しかも、アテナは、こういうことが大っ嫌いなんだ。もし、俺たちのことが沙織さんに知れたら、俺と瞬は――」

あ、そういうわけか。
嫌そうなお顔は私のせいじゃなかったのね。
そうよね、なんったって、私は氷河様と瞬様の味方なんだもの。

「まあ、聖闘士たちを統べる女神ともあろう人がそんな狭い心の持ち主だなんてっ! 私、沙織お嬢様にかけあってきます! たとえクビになったって、私には、氷河様と瞬様の愛の方がずっとずっと大事ですから!」

私はもちろん、超本気。
氷河様と瞬様の愛を邪魔する者は、たとえアテナといえども、この私が許さないわっ!

早速、沙織お嬢様のお部屋に直談判に行こうとした私を、なぜか、氷河様は慌てた様子で引き止めた。
「俺は……俺はそんなことはどうでもいいんだが、瞬は、そんなプライベートなことで、いらぬ波風を立てたくないと思っている。そして、瞬は、聖闘士としての務めに誇りを持っている。あー、だからだな……」

氷河様と瞬様の仲をエイトセンシズを上回る力で見抜いた私には、氷河様が何を言わんとしているのか、すぐにわかった。
つまり――口止め。
お二人のことを、誰にも言わないでいてほしいって、氷河様はおっしゃっておいでなんだ。

そうね。
いつもご自分のことより、他人のことを思い遣る瞬様なら、そういう考え方をなさるかもしれないわ。
それに、なんったって、瞬様はデリケートなお心の持ち主だし、恥ずかしがりやさんでもあるみたいだし。
うふっ、可愛い♪

「わかりました! 二人のえっちのことは内緒ですね! 私、誰にも言いません!」

私は、瞬様を安心させるために、きっぱりとお二人に約束した。

でも、それって意味あるのかなぁ?
コミケ会場に行くと、氷瞬やおい本はごろごろしてるし、インターネットでだって、氷瞬サイトは腐るほどある。
しかも、熱烈な氷瞬信者は、二人がほんとにそういう仲だって信じ込んでるんだもん。
今更隠したって、ううん、隠せば隠すほど、みんな更に勘繰るだけだと思うけど。


「頼む。きっとだぞ」

でも、氷河様にそう言われたら、私は頷くしかない。
要するに言わなきゃいいんでしょ。
書く&描く分には平気よね。


よーし、次のコミケでは、うーんとハゲしい本出すぞーっ!!

私は、心の中で、堅く堅く決意した。






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